貧困独居高齢者の住まい

地域から孤立する貧困独居高齢者―大阪市、更生施設退所者の現状より― 葛西リサ
筆者は、大阪市にある更生施設を退所した高齢者(高齢OB)を対象に家庭訪問形式によりその住生活のモニタリング調査を実施しています。そこで見えてきたのは、高齢OBの社会からの孤立という問題です。更生施設退所者の多くが家族や地域との関係を喪失しています。とりわけ高齢者は身体機能の低下や行動範囲が限られ、より一層引きこもりがちとなります。高齢に加え「貧困」、「独居」、「疾患」という課題を抱える彼らにとって、介護ヘルパー、ケースワーカーといった他者が唯一の接点となっている現状があります。よって、たいていの高齢OBは生活時間のほとんどを1人で過ごし、食事は外食、家食にかかわらず、3食とも「孤食」といった孤独な生活を送っています。こういった状況の中で、孤独死のリスクを感じている高齢OBは少なくないというのが筆者の印象です。「なんかあった時のために窓の鍵を開けている」、「家賃が直接支払いなので、何かあっても、早目に見つけてくれると思う」などネガティブ、且つ、ささやかな期待を抱いている者も少なくありません。しかし、彼らが言うように独居高齢者が増加し続ける昨今、「早期に発見される独居死」は避けがたく、解決すべきは「放置される孤独死」なのかもしれません。
 彼らの多くが生活保護を受給しており、よって、その住宅は、風呂なし、ソトの音が漏れる、設備共用など、低質なものが多いのが実情です。しかし、彼らの生活を観察していく中で、こういった「生活のはみ出し」という要素が「放置される孤独死」の緩和に繋がるのではないかと感じるようになりました。彼らの住まいは、風呂なし文化住宅、設備共用のアパート、簡宿転用住宅、ワンルームというように多様です。この中で、孤立度が高いのがやはり、住戸内で全ての生活行動が完結でき、ソトとの関係が完全に遮断されたワンルームでした。他方、設備は不十分であるが、生活のはみ出し部分の多い、文化住宅や設備共用のアパートなどでは、他者との関係を(嫌でも)持たざるを得ず、それが、存在をソトにアピールする一つのツールとなっている事例が確認されています。例えば、文化住宅に住むAさんは、洗濯機と物干しが玄関通路側に設置されているため、そこで「挨拶はしないが顔は知っている」程度の隣人と接触すると言います。また、玄関通路側に窓が設けられている文化住宅居住者からは「足音と人影で隣人が帰宅したのがわかる」という意見が多く、それを「うるさい」と感じず「少し安心」とポジティブに捉える意見がありました。更に、この作りを活かして、中の様子がソトに漏れるように「仕切りのふすまは極力しめない」といった声もあります。また、簡宿転用住宅に住むAさんのケースでは玄関を入ってすぐの部屋に明るい女性オーナーが居住しており、その前を通らないと自室に行けないつくりとなっています。Aさんは、風呂もソト、便所も共用だが、その「生存確認」が優先といいます。現在の住まいのカタチは、プライバシーの確保、面倒な近所付き合いへの嫌悪などから、私たちが積極的に選択してきたものではありますが、上記の例のように、ソトと遮断された空間が招くリスクも同時に考える時にきているのではないかと感じています。勿論、低所得者層の住宅の質の改善は必須の課題ではありますが、水準を満たすだけの簡易な設備の整備のみに捉われる住まいの在り方を今一度問いただすことも重要ではないでしょうか。
(2010 夏 関西住宅会議 あすか)

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