ケア相互補完型集住シェアカルテ4 母子世帯向けシェアハウスの草分け的存在「ペアレンティングホーム」

  • ペアレンティングホーム(PH)のなりたち

PHの特徴は、まず、高額所得母子世帯をターゲットとしている点、そしてハイスペックなハード、更には、週2回(ハウスによっては週1回)のチャイルドケアと夕食の居住者サービスを付加している点にある。

開設以降、しばらくは、集客に苦戦した時期もあったが、「必ずニーズはあるはず」と強い信念を貫き続け、そのブランド化に成功している。2015年12月現在、首都圏に同系列のハウスは4棟存在し、その入居率も上場とのことである。ここ数年、シングルマザー向けのシェアハウスの開設が相次いでいるが、その事例のほとんどが、少なからず、PHの影響を受けているといっても過言ではない。

では、PH開設のきっかけは何だったのか。PHを手掛けた株式会社ストーンズの細山代表によると、「わが社では、以前から、単身の若者向けのシェアハウスを運営していました。PHの建物を見たときに、ハードが単身向けにしては豊かだなと。でも、ファミリー向けにしては手狭だった。また、ちょうどそのころ、僕の周辺にシングルマザーがいて、残業で遅くなると慌ててどこかに電話したり,子どもが熱を出したと言って気まずそうに早退したりするのを見ていて大変そうだなと。自宅に誰かがいたら、ずいぶん助かるだろうなと。」といったエピソードから、シングルマザー向けハウスの開設を思いついたのだという。

そして、2012年の3月、「仕事と子育てを楽しく両立する」というコンセプトを掲げ、ペアレンティングホーム第1号を神奈川県の高津にオープンさせた。

PHの住居費は、「母子世帯向け」にも関わらず高額である。家賃は立地や住宅のスペックにより5万8千円~12万円と幅広く,これに共益費(2~3万円)が加算される。よって,月あたりの住居費の総額は,最低でも8万8千円,最高では14万円となる。それでも、問い合わせは全国から寄せられるのだという。

 

  • ペアレンティングホームという発想

問い合わせの約8割が離婚直前,あるいは,離婚直後の新生活準備に際しての相談である。その多くが、「仕事をしながら一人で子育てをするイメージがわかない」や,「誰かと一緒なら安心して子育てができるのではないか」といった理由から問い合わせをしてくる。また,地方の母子世帯からは,「就労機会の豊富な首都圏に移住したいが,同じ境遇の人が近くにいると心強い」といった声が聞かれるのだとか。

子育てをしていると、突然の病気やケガは勿論、子の言動やちょっとした行動に大きな不安を抱くことも少なくない。ましてや、たった一人で、子育てと仕事をこなさなくてはならないという現実に、押しつぶされそうになる気持ちは十分に理解ができる。誰かとつながることで、「いっぱいいっぱい」の子育てが「楽」に「楽しい」ものになる。PHはそんな可能性を秘めたハウスなのである。

このほか、問い合わせの中には、「子の社会性を養うため」といったものや、「仕事と家の往復で大人とかかわる機会がない」更には「狭い空間の中での子どもとの生活に疲れる」といったものもある。

PHでは、週に1~2回、夕方から夜間の数時間、夕食とチャイルドケアのサービスを提供している。夕食は、厳選された食材を使用し、栄養バランスに配慮したものが提供される。プロの料理人が調理を担当するハウスもあり、居住者からは好評を博している。チャイルドケアとは、保育所で研修を受けたスタッフがハウスにて、子どもの遊び相手や知育、ドリルを用いた学習指導を行うというものである。その間、母親は在宅していなければならないが、別室にて居住者同士で談話したり、自室にて持ち帰ったデスクワークをこなしたりと各自、自由な時間を持つことができるのである。

日々、時間に追われ、孤軍奮闘するシングルマザーにとって、「自分だけの時間」は、無に等しい。実際に、一人の時間が持てないことにストレスを感じ、「夕食+チャイルドケアサービス」に興味を抱いて問い合わせをしてくるシングルマザーは少なくないのだという。

筆者は、数名のシングルマザーを対象に、シェアハウスニーズを探るためのワークショップを開催したことがある。その際、「残業になると、一番気になるのが子どものご飯。ここを少し助けてもらえたら・・・」や「週に1~2回だけでも自由時間が確保できたら、集中して残務をこなすこともできる」という回答が挙がった。つまり、週にたった数時間、されど数時間。忙しい母子世帯にとっては、非常に貴重な時間なのである。

 

  • サービスの共同購入とゆるやかな助け合いのバランスがベスト

居住者同士のケアの相互補完についてのルールはなく,「やれる人がやれる時にやれることをする」という極めて緩やかなものである。とはいえ,自然発生的な助け合いは様々な場面で見られる。例えば,材料費のみで夕食の準備を買って出る住人がいたり,少しの間,幼い子どもの面倒をお願いしたりという互助の仕組みは日常的に行われている。

筆者が訪れた日のリビングの掲示板には「賞味期限の近い食材があれば提供してください。夜食に使います。」といった走り書きがあった。

また,子ども同士が兄弟のように遊び,大きな子が小さな子をあやすといった関係は,忙しい大人たちにとって大きな助けになるという。更に,居住者同士が刺激し合ったり,安心感を得たりということも集住のメリットである。あるハウスのリビングの掲示板には,居住者それぞれの「今月の目標」が掲げられている。リビングの雑談の中から生まれたその小さな取り組みは,居住者の大きな励みとなっているとのことであった。

もちろん、助け合いと言っても、負担が特定の居住者に集中することでトラブルに繋がることもある。その場合には、運営側がコーディネートし、ルールを新たに作るなどの対応を行うのだという。

 

  • 非血縁家族の交流の起点となる広々とした空間

建物は、複合ビルのワンフロアや規模の大きな一軒家を借り上げる形で確保している。いずれも、広々とした共有空間が目を惹く。

例えば、高津のハウスは、玄関を入ると、廊下を挟んですぐ両側に4部屋、そのまま奥へ進むと、広々としたLDKに到達する。更に、その奥に、4部屋と風呂、便所、洗面所がある。動線上にLDKがあり、居住者は頻繁にそのLDKに足を踏み入れることとなる。

PH高津図面.jpg

図面1 PH高津平面図(http://stone-s.co.jp/company/より)

そこで、居住者同士のちょっとした交流が生まれるのが面白い。筆者が、高津を訪れたのは、ちょうど、小学生の子ども達が下校する4時頃であった。居住者の1人が、キッチンで夕食の準備を始めていた。その幼い子どもは、リビングでベビー用の椅子に座っている。そこに、小学生たちが自室に入ろうとリビング入ってきた。「ただいま~」、「おかえり~」という声がリビングに響く。すると、リビングで座っていた乳児がぐずりだした。小学生らは、「仕方ないな~」といった具合で、ランドセルを背負ったまま、その子をあやしだした。

幼い子の母親にとっては、小学生らがいることで、その間、調理に集中することができる。他方で、小学生らの親にとっても、LDKに誰かがおり、下校後の子と共にいてくれるというだけで安心を得られるのである。

こういった人のつながりで、日々のちょっとした面倒や心配は、大きく解消される。家族関係や地域関係が希薄化する現代だからこそ、求められる住まい方なのかもしれない。

 

  • さいごに

細山オーナーに「課題は?」と聞くと、「色々。特に女性は、大変。」と笑う。開設から3年、着実に知名度は上がっている。更に、2014年度からは、母子世帯をも含めた、多世代型シェアハウスも開設している。シェアハウス業界のパイオニアとして、単なる非血縁者が集まり住まう「同居」という枠を超えたコンセプトの提示をこれからも期待したいと思う。

 

PH高津リビング

写真1 PH高津リビング(http://stone-s.co.jp/company/ より)

 

PH阿佐ヶ谷リビング.jpg

写真2 PH阿佐ヶ谷リビング(http://stone-s.co.jp/company/)

 

 

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  • インタビュイー

株式会社 ストーンズ

細山 勝紀 取締役社長

 

神奈川県 川崎市 高津区 二子 5-9-1

TEL 044-865-0055

MAIL kanri@stone-s.co.jp

http://stone-s.co.jp/company/

 

 

 

 

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