子どもの空間貧困を考える

昨日、久々に、いつも調査でお世話になるある団体を訪ねた。そこに、2人の子を育てる顔なじみのママさんが来て、しばし雑談。住宅の問題を聞いてみると、狭いことが目下の悩みなのだという。そこで、今暮らす住宅の間取りを書いてもらった。とてもリアルで興味深い図面だったので、清書してよと懇願し、白い紙に書いてもらった。とても小さい小さいその部屋で、小学生の子ども2人と暮らしているそうだ。一番困っていることは?と聞くと、「何よりも、こどもの学習スペースが確保できないことが辛い」のだという。勉強机は物置と化し、子どもたちはいつも床に這いつくばったりしながら、肩を寄せ合って宿題をしているという。

経済格差が、教育の格差を生むというが、空間の貧困も子どもたちの学習の弊害となっているよなと感じる。重要な論点と感じ、目下執筆中の原稿に書き込んでみた。どんな建築家が書く図面よりリアルで素晴らしい。

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母子世帯は低質な借家、それも、民間の借家に居住する割合が高い。筆者が大阪市の母子世帯に実施した調査によると、民間借家に居住する母子世帯の4割が最低居住水準未満であった(葛西2007)。この結果は、住宅・土地統計調査の同時期、同地域の一般世帯の数字より2倍以上も高い。また、実家等に同居する母子世帯の居住水準の低さも大きな課題である。我が国においては、3~4割程度の母子世帯が実家に同居をしている(厚労省2011再掲、総務省2010)。一般に、「同居」=「恵まれている」というイメージを持たれがちである。確かに、同居先が持家というケースは圧倒的に多い。しかし、筆者の調査によると、同居している世帯の4割が借家に居住しており、うち2割が公営住宅に身を寄せていた。この中には、限られたスペースの中で個室すら確保できず、「私と子ども2人が台所に布団を敷いて寝起きしています」という事例もあった。

このような狭小なスペースでの生活は子どもの成育環境にも大きな影響を与えると推察される。

例えば、2Kの住宅に9才と10才の子どもと共に暮らすBさんの悩みは子の学習スペースが確保できないことである(写真1)。「勉強机を置くスペースがなく、窮屈そうに宿題をしているのが不憫」だというBさんは、かつて、6畳1間の住宅に暮らしていたこともある(写真2)。子どもの成長とともに「ここには居られない」という危機感はあるが、これ以上の住居費が捻出できないことにBさんは悩んでいた。

幼いきょうだいが騒いだり、泣いたりする中で、学習に集中できているのだろうかという悩みや、性別の異なる10代のきょうだいを同室で就寝させることに違和感を覚えるという意見は、多く寄せられる。経済的貧困が子ども達の教育の機会を奪うという意見はよく聞かれるが、空間的な貧困が子ども達の学習に与える弊害も併せて議論されるべきであろう。

 

2間図面

写真1 シングルマザーが書いてくれた現在の住宅

 

一間6畳一間図面

写真2 シングルマザーが書いてくれた過去の住まい

 

 

 

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