ケア相互補完型集住シェアカルテ5 地方型シェアハウスモデル 「ぽたり」

○地方で母子世帯向けシェアハウスを開設する

シングルマザー向けのシェアハウス事例は、都心部に多く確認されるが、今回紹介するシェアハウスぽたりは、地方型シェアハウスモデルとして期待される数少ない事例である。場所は、博多駅から北福ゆたか線で約1時間、小竹駅から車で約10分。緑の多い、のどかな地域に位置する。

potari-gaikan

開設は2015年7月。木造一戸建てを新築してのスタートだった。1階には広々としたLDKと6畳の洋室が2部屋。2階には、1階リビングの様子が見渡せるように、吹き抜けを中心に、7畳の個室が4部屋。更に、バス、トイレなどの水回りは各階に設置されている。

potari-2kaikara.jpg

家賃は、個室の条件により、39,500円から40,500円。これに駐車場代が2,000円と共益費7,500円が加算され、住居費は最大で月当たり50,000円となる。しかし、ここからがご注目。

ハウスのある宮若市では、子を持つ転入世帯に最大25,000円の家賃補助を最大3年に渡り補助をしており、これを利用すると、実質、月額25,000円とかなり低家賃で居住することができるのだ。また、ぽたりでは、共益費の中に、水光熱費はもちろん、米や調味料、洗剤やシャンプー、トイレットペーパーなどの生活用品が含まれる。よって、その他にかかる生活費もかなり安く抑えられる点が魅力である。

potarikositu

では、なぜ、この地域に、しかも、母子世帯をターゲットとしたハウスを開設したのだろうか。代表の松尾代表は、フランチャイズチェーンの店長を務める傍ら、同事業への参入を決めている。その職場で、パートのシングルマザーに出会うたびに「これはしんどいな」とその厳しい現状に胸を痛めていたとのこと。

「社会貢献として何かできないかなと考えていて。でも、直接的な支援とか、実働する時間もないし。そんな時、テレビでシェアハウスの特集をやっていて。これだ!と思いました」と松尾代表。代表は、かつて、十数年、海外暮らしを経験したことがあり、そこで、自宅を開放して、シェアハウス運営を実践していたことがある。そのためシェアハウス事業に参入することには「全く抵抗はなかった」のだと言う。

早速、シェアハウス事業者や母子世帯を支援する団体などに出向き、勉強を開始。極力、低家賃で住めるようにと思案した結果、家賃補助制度のある宮若市に土地を購入することに決めたのだという。

 

○地域資源をつなぐ

恐らく、読者の中には、「地方で仕事があるのか?」と思う方もいるだろう。確かに、その点は大きな課題なのだという。そこで、松尾代表は、地域の医療、介護、保育機関に出向き、辛抱強くネットワークづくりを行ってきた。

「地方では、介護などのケアの担い手が絶対的に不足しています。そこで、入居者をしかるべき機関につないで、就職の世話をすることもあります。逆に、医療現場などで働く母子世帯が住まいの問題を抱えていればご紹介をいただくこともあって」という連携ができつつあるのだ。

また、地方では、車が必需品となる。もともと地方で暮らしていた入居者などは、車を所有しているものも多いが、都市部からの入居者の多くが自家用車を持っておらず、それを新たに購入する余裕もないのが実情だ。

「車がないと働けないので、地域で車を安く入手して、カーシェアリングを実験的に始めています。職場が同じだったりすると、乗り合いで通勤することもできるんじゃないかと期待しています」とのこと。

このほか、保育所不足も深刻である。事実、ハウス周辺の保育所は常に待機児童を抱えている。ただし、地方では、車通勤がほとんどであるため、必ずしも保育所をハウス周辺で確保する必要はないと松尾代表。

「職場まで車で30分かけて通勤する入居者もいて。その圏内に保育所を探して預けている人もいます。都心よりは、広範囲で保育所探しができる点が強みだともいえます」とのこと。

開設から約1年、総勢7世帯の入居者が入り、3世帯が卒業していった。ほとんどが、福岡県外からの入居者だ。しかし、そこで、直面したのが、退去後の住まいの問題である。

「地方といえども、一時金、保証人、最低限の家財道具の購入など、転居のハードルはかなり高いんです。ようやく仕事も見つかって、生活も安定して、別の地域に転出というのももったいないなと」という気持ちから、松尾代表は、新たな事業を展開しはじめている。

それが、空き家を活用した、ハウス退所者のための住まいの確保だ。

「御多分に漏れず、宮若市でも空き家が多くあります。土地付きでかなり安い価格で売りに出ている物件もあって。それを購入して、退去者に貸すという事業を始めました」とのこと。

クーラーや洗濯機、冷蔵庫などの家電製品は、遺品整理事業者から無償で提供してもらい設置した。家賃は、シェアハウスと全く同じ設定であり、水光熱費、米、調味料、シャンプーなども共益費の中から提供される。家賃補助も3年間利用できるため、一軒家に転居後も、しばらくは25000円程度で生活ができるのである。このように、シェアハウスから、そのまま、独立した生活に移行できる仕組みを独自で作ってしまっているという点があっぱれである。

potarizumen

potarizumen2.jpg

 

○卒業生も集まる場所ぽたり

「多くが県外からの入居者。地域との関係が薄い人がほとんど。ハウスを卒業したら関係が切れるというのも悲しい。だから、定期的に卒業生も含めたイベントを開催するんです。卒業生がふらっとハウスを訪れることもあるんですよ。」と松尾代表。

potari daidokoro

筆者がハウスを訪れたのは、夏休みも終わりかけの平日の昼間。リビングでは、3人の子どもたちが元気に遊んでいた。その傍らで、談笑する若いお母さんたち。聞けば、ひとりのお母さんは、数日前に入居してきたのだとか。

「明日は、新しい入居者さんを歓迎して、バーベキュー大会をするんです」と松尾代表。もちろん、卒業生たちも参加の予定だ。子どもたちはそれがうれしいのか、大はしゃぎしていた。

リビングには、卒業生たちの写真が飾られてある。その中に、高齢の女性が一人。

potari living

 

「この方は、地域の方で。夫さんを亡くされ、寂しい思いと同時に、社会貢献がしたいと、一定期間、ハウスに入居してくれていました。今は、不在ですが、また、冬ごろから入所してくれる予定です。みんな彼女が大好きで、ハウスのまとめ役なんです」とのこと。

地域には元気な高齢者がたくさん。「貴重な支援者ですね?」と筆者。

すると、「そうなんです。保育所も、ハウスの周辺にあればって思って。空き家を活用して自前で保育所ができないかって考えていたら、既に退職したベテラン保育士が手を挙げてくれて。準備が整ったらいつでも声をかけてって。心強いです」と代表。

地方だからこそできるハウスの形。全てを一事業者で抱え込むのではなく、異業種、更には、埋もれている人材とのコラボレーションがハウスの可能性を広げるポイントなのかもしれない。

最後に、松尾代表の野望は?と聞くと。「ぽたり村を作ることかな?」と一言。

シングルマザーが、ハウスを求めて全国からやってきて、ハウスを卒業して、地域に根付く。卒業しても、ハウスとつながり、色んな人を巻き込んで居住者の輪を地域に広げていく。「正直、採算性は低いですが、家賃を上げる気はありません」とのこと。

地方における母子世帯向けシェアハウスの貴重なモデル。今後も、その動向から目が離せない。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

シェアハウスぽたり

住所;福岡県宮若市鶴田1861-5

電話;090-3882-1888(松尾代表)

代表;松尾好紘

アクセス;小竹駅から車で約10分、勝野駅まで車で約8分

☆車があれば、不便は感じないところです。家の前に、市の無料バス(ぐるぐるバス)の水町バス停があります。

↓松尾代表は、第30回「人間力大賞」のファイナリストに選定されているとのこと。ぜひご覧ください。

http://l.facebook.com/l.php?u=http%3A%2F%2Fwww.jaycee.or.jp%2Fningenryokutaisyo%2Fenquete%2F&h=RAQFNJPYr

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中