ケア相互補完型集住シェアカルテ6 母子世帯、父子世帯、そして、単身世帯がともに暮らす多世代型シェアハウス スタイリオウィズ代官山

○代官山にひとり親向けシェアハウス?

スタイリオウィズ代官山は、2014年3月、代官山駅から徒歩2分の立地に開設されている。同ハウスの大きな特徴は、母子世帯の他、父子世帯をも対象としている点、そして、ひとり親と単身世帯をミックスさせている点だろう。定員も、ひとり親8世帯、単身13世帯と従来のひとり親向けハウスと比較してもかなり大規模である。

なぜ、このような立地にひとり親向けハウスなのか?と疑問に思う読者も多いと思われる。筆者もそのうちの一人であった。

この点について、企画運営を担当する、東急ライフィア株式会社の露木圭氏は「事業主の東急電鉄が渋谷区の防災職員住宅を転用して、新たなコンセプトで何ができるか、というのが事の始まりでした。採算性ももちろん重要ですが、同時に区の建物を利用するうえで社会的にも意義があり、その延長で女性、子育て世帯に優しい住まいというテーマを突き詰めた結果がスタイリオウィズ代官山なんです。」と説明してくれた。

建物は4階建て。エントランスを抜けてすぐ左手に共有のリビングが、廊下を挟んで向かい側に共有のトイレなどの水回りがある。その奥が居室という作りだ。1階、2階がひとり親向け、その上階が単身向けフロアである。キッチン、風呂、トイレなどの水回りは各階に設置されており、屋上には、ウッドデッキや菜園スペースなどが設けられ、誰もが気軽に出入りできる空間となっている。

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図1 ひとり親世帯向けフロアの図面(http://stylio.jp/with/daikanyama/rent/ より)

 

ひとり親向けの居室の規模は、約7畳から9畳。家賃は79,000円から98,000円、ここに、共益費20,000円が加算される。決して安くはないが、ここ数カ月、満室状態が続いているのだとか。入居者は、なんといっても代官山という立地、そして、誰かと共に住まうという安心感に魅せられて集まってくるのだという。

 

○ゆるやかに多面的につながる

ハウスのコンセプトは「頼り、頼られ、助け合う子育てのカタチ」である。

「仕事や子育てを一人で頑張るって、とっても大変なことだと思います。でも、そのしんどさを誰かと分かち合うことができて且つ頼りあうことができたら、ひとり親にとって、何より、子どもにとってもメリットになるんじゃないかと思うんです。」と露木氏。

リビングで大人たちが談笑する傍らで、子ども達が遊ぶ。家事で手が離せない時、誰かが子どもを見てくれる。そういった環境があるだけで、孤軍奮闘するひとり親は随分救われることだろう。

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写真1 1階リビングの様子(http://stylio.jp/with/daikanyama/public/ より)

ひとり親世帯、単身世帯、男女、大人そして子ども総勢約30名での集住だ。更に、セキュリティのある共有のリビングには入居者の知人や子育てサポートの来訪者が自由に出入りできる。居住者同士で閉じるコミュニティではなく、立場の違う人々が多面的に緩やかに繋がることができる点がハウスの可能性を広げている。とはいえ、共有空間と個室は意図的に区別されているため、プライバシーは十分に確保される。このように、公と私の次元を自由に行き来できる点が居住者にウケるポイントかもしれない。

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写真2 ファミリー向け居室の様子(http://stylio.jp/with/daikanyama/rent/ より)

 

ひとり親と単身世帯の交流はどうだろうか。

「ファミリー世帯と単身世帯はうまく共存していますよ。子どもが好きな単身者は、積極的にリビングに降りてきて、コミュニケーションをとっています。でも、もちろん、中には、自分だけの生活を楽しみたい人もいる。それって、地域社会でも同じじゃないですか。それに、子どもだからって許されることはないので普通に廊下で騒げば叱られます。大人も子どもも平等にここのルールに従って、それぞれの立場で、みんなうまく生活してくれています。子どもにとっては、色々な大人がいるということを知る意味でいい環境じゃないかな。」と露木氏。

一見、強面の若いお兄さんたちも、リビングでは優しい顔をして子どもたちと遊ぶ。ガラス食器が割れた際には、単身の男性が、そこで遊ぶ幼い子ども達を避難させ、ある程度掃除をしてから、管理会社に一報を入れてくれたという。単身者側は、子どものお迎えにいったり、食事の準備をしたりと直接的なケアにかかわるわけではないが、大人の目があるという環境が親の安心感と子どもたちの安全を守ることにつながる事例だと言えるだろう。

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写真3 屋上の様子(http://stylio.jp/with/daikanyama/public/ より)

○家族の輪郭がぼける

筆者が、ハウスを訪れたのは、平日の夕方。リビングに2人の子どもを連れた女性が入ってきた。筆者があいさつをすると、その女性は「私?居住者じゃないんです。」と首を振る。聞けば、近隣に住むその女性は、居住者の子どもを保育所に迎えに行き、ハウスに送り届けに来たのだという。「ということで、私の実の子はこの子です」と、抱っこ紐の中で眠る幼い子を指さしながら状況を説明してくれた。

居住者同士の緩やかな助け合いはあるが、それだけでは足りないケアもある。そこで、スタイリオウィズ代官山では、ワンコインで利用できる育児サポートの仕組み=子育てシェア(As Mama)サービスの活用を居住者に勧めているのだ。

同サービスの利用に際しては、スマホなどのネット上で,基本情報のほか,居住地,保育所,職場等の条件を任意に入力しておき,助けが必要なときに画面を見ると、そのとき手を貸すことができる近しい会員メンバーが地図上に表示される。登録は無料であり、必要な時に必要な時間だけ利用できる点がメリットだ。必要時にはそのシステムに一報を入れれば,手の空いた登録メンバーが返信、対応してくれるという仕組みである。急な残業時にも柔軟に対応ができ,1時間500円の利用料という対価があるということも手伝って,変に気おくれなくこれを利用する入居者は多いのだという。

「小さなコミュニティでの生活は何事も特定、かつ属人的になりがち。でも、これだけの居住者がいて、子育てシェアの活用など積極的に外の世界とつながることで、属人的な要素はぐんと薄まって、不必要な入居者同士の気づかいや人間関係のトラブルなどもあまりないですね。むしろ、繋がりを選択できるという要素が重要なのかもしれない。それに、親と子だけの世界であれば、あれもこれもと1人で頑張っちゃうけど、多様な人と生活することで、家族の定義があいまいになるというか、家族の輪郭がぼけるというか、溶け出すというか。とても面白い現象ですよ。」と露木氏は多世代型ハウスを表現する。

ひとり親をターゲットとした多世代型ハウスの希少なモデル。今後、シリーズ化に期待したい。

 

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スタイリオウィズ代官山

東急東横線「代官山駅」から徒歩2分、

東京メトロ日比谷線「恵比寿」駅 徒歩6分 JR山手線「恵比寿」駅 徒歩8分

http://stylio.jp/with/daikanyama/

 

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