「ケア相互補完型集住」シェアカルテ8 イメージは現代の長屋? 郊外住宅地型母子世帯向けシェアハウス。 ペアレンティングホーム(PH)金沢文庫の挑戦

〇重要なのは居住者との距離

 ペアレンティングホーム金沢文庫は、京急本線金沢文庫駅から徒歩18分の閑静な住宅街「西柴団地」に位置する。定員は3世帯、現在、2組のシングルマザーが総勢6名で生活している。

同ハウスは、20143月、オーナーの長嶺千里さんが、自邸を開放する形で開設したものである。長嶺オーナーはご家族とともに複数の賃貸物件を所有する不動産経営のプロ。では、その方がなぜ、自邸を開放してまで、シングルマザー向けのシェアハウスに拘ったのか。

 

 

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写真1 ペアレンティングホーム金沢文庫の外観(事業者より提供)

「これまで、物件の管理運営を一括して管理会社に委託していました。そうなると当然、居住者様と直接かかわる機会はほとんどない。賃貸経営にはトラブルはつきものなのですが、それは、居住者様としっかりコミュニケーションをとっていれば、防げたものも多々あると気づきました。もう少し近い距離で、居住者様に接し、何か、社会貢献のようなことができないか。いろいろと思案する中で、到達したのが、シングルマザー向けシェアハウスという発想だったんです。」とことの経緯を説明してくれた。

 

 重要なのは居住者との距離。これを一番に考えたからこそ、ハウスの立地は、長嶺家族とそのご両親、更に、親戚が暮らす「西柴団地」にこだわった。また、ハウスの開設にあたり、長嶺一家は、10年住んだ自邸を明け渡し、そこから徒歩5分の別邸に移ることに。

 

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写真2 ウッドデッキで遊ぶ子どもたち(事業者より提供)

 

 ハウスの間取りは、1階に27畳のLDKと浴室やトイレなどの共用部を集中させ、2階部分には8畳、7.5畳、6畳の居室と4.5畳のフリースペースを配置した。フリースペースには共有のパソコンが設置されており、母親が事務作業をこなす傍らで、子どもたちが宿題をするなどの光景が見られることも。

 

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図面1 ペアレンティングホーム金沢文庫1F図面(事業者より提供)

 

 

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図面2 金沢文庫2F図面(事業者より提供)

 

 家賃は、62000円から65000円、そこに30000円の共益費が加算される。共益費の半分は、本来、週に1度のチャイルドケアと夕食に充てられるものであるが、現在、利用希望がないため、実質共益費は15000円となっている。

 

〇 居住者とともに作り上げる住まい

 ハウス開設後、一年間は集客に苦戦した。課題は、母子世帯向けシェアハウスの認知度の低さ、そして、コミュニティがすでに出来上がった住宅街の敷居の高さだったと長嶺オーナーは回顧する。とにかく、ハウスの存在を知ってもらおうと、あらゆる媒体を使って情報を発信、オーナー自ら講演活動も買って出た。更に、地域ぐるみで居住者を迎える下地を作ろうと、近隣住民に事情を説明、ハウスへの理解を求めた。また、オーナーの奥様の雅子さんとその妹さん、そして、オーナーの妹さんの3人でサポートチーム「3mamasを結成。

そうこうするうちに、問い合わせが増え、2015年3月、第1号の入居者を迎える運びとなった。入居者は、小学生、中学生の子ども2人を育てる働くママ。

「ここでなら、この人たちとなら、働きながら安心して子育てができる。」そんな思いで入居を決められたのだとか。

その後は、サポートチーム3mamasが力を発揮。なんといっても、同世代の子育てママたち。サポーターと居住者という垣根を越え、すぐに意気投合した。子どもたちも、オーナー家族に自然に打ち解け、「今日はうち(オーナー宅)にハウスの子が、明日はハウスでうちの子が泊まるなんてこともしょっちゅうなんですよ」という関係が出来上がる。

 

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写真3 居間でウッドデッキで遊ぶ子どもたちの様子(事業者より提供)

 

 

 PH金沢文庫では「居住者とともに作り上げる住まい」という点を意識し、個室の家具も一緒に選定している。

「長く住んでほしいので、やはり住みやすさが一番。家具だって不要なものを配置しても意味がない。一緒にIKEAに行って、必要なものを選んでもらいます。といっても、組み立てるのは私の役目なんですが・・・」と入居後もその手間を惜しまない。

また、坂の多い西柴団地での生活を楽しんでもらおうと、電動自転車の貸与も開始した。

 居住者のニーズを丁寧に拾い上げ、それにこたえるハウス運営はお金も手間もかかるが、その分、かかわりは密になる。これこそが、PH金沢文庫の最大の特徴と言えるだろう。

 

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写真4 居室の様子(事業者より提供)

 

〇今の居住者を大切にすることが基本

 早く、空室を埋めたい。多くの賃貸経営者が思うことだろう。しかし、焦らず、じっくり、時間をかけて入居希望者と向き合う。これが長嶺流だ。

 第1号の入居者を迎えてから1年半、新規入居者が入らず、シェアハウスと呼べない状態が続いた。その間、月に2~3件の問い合わせが入ったが思うように入居には結びつかなかった。

  「特別な入居基準はありません。しかし、家賃が支払えること。そして、重要なのは、将来に向けての明確なビジョンと目標があること。この点をなにより重視しています。助けてほしいというサインを出す方もたくさんおられるのですが、われわれができるサポートは限られています。切迫した方をお引き受けすることで、その方も不幸になり、更に、現入居者さんにも迷惑をかける。だからこそ、入居者選定には時間をかけたい」と長嶺オーナー。

 入居希望者とは可能な限り面談をし、相談に応じる。実際にハウスでの生活を体験してほしいと無料のお泊り会も開催。

 「もちろん、色々と検討したけど、最終的には実家に戻る決断をされる方もいます。その中には、今でもメールのやり取りをする方がいて。やっぱり、事情を聴いた分、ほうっておけないんですよね」とアフターフォローも欠かさない。

そんなPH金沢文庫も、先日、2組目の居住者を迎えた。その際、最も頭を悩ませたのは、現居住者とのマッチングだったという。

 「その方にお会いした時、是非、入居してほしいと思いました。ただ、運営者側との相性が良くても、現入居者さんとの関係がより重要」との思いからマッチングの場が設けられた。

新たな居住者は、小学生と乳幼児の2人の子どもを育てながら働くママ。同じシングルマザーとして共通する部分も多く、2人が打ち解けるのにそう時間はかからなかった。

今では、とてもよい関係の2人。夕食後には0歳から中学までの子どもたちが群れて遊ぶ。そこに、時折、オーナーのお子さんたちも混じるのだから、リビングはいつも大賑わいである。

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写真5 リビングで食事を楽しむ子どもたち(事業者より提供)

〇イメージは現代の長屋

 筆者がハウスを訪れたのは、昼食前のあわただしい時間。キッチンには、居住者とその幼い子をあやすサポーターの雅子さんの姿が。2人の会話はなんだか楽しそう。

   「ああやってなんだかんだ、世話を焼いているんですよ」とその光景を嬉しそうに眺める長嶺オーナー。

 

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写真6 全面改装したキッチン(事業者より提供)

 

今では、近隣の住民が居住者に気軽に声をかけてくれるようになった。ハウスを中心に、ピザパーティーや餅つき大会など、地域に開くイベントも増えてきた。そこで、何かあると、必ず、お節介を焼く人が出てきて、その場を収めてくれる。多様な立場の人が多面的にハウスにかかわり、それによってハウスの在り方も日々変化している。PH金沢文庫の根っ子にあるコンセプトは現代版の長屋。筆者が見る限り、そのイメージは確実に具現化されつつある。

徒歩10分圏内に、保育所、幼稚園、小学校、中学校がバランスよく点在する。子育て世帯には絶好のロケーションだ。この地の利を生かして、心地よく、長く住み続けてほしいというのがオーナーとサポーターの切なる願いである。

他方、そんな長嶺オーナーが最近懸念しはじめたのが「シェアメイトロス」。居住者同士の関係が密になれば密になるほど、退去者が出た時、残された方の精神的ダメージは大きくなる。これは、小規模型のシェアハウスが今後直面する大きな課題かもしれない。

「それを回避するには、早く、3世帯目の入居者をお迎えすること。また、この西柴団地にハウスの輪を広げ、地域全体がシェアハウスの様になれば」というのが目下の課題である。

 西柴団地もご他聞にもれず高齢化が進み、空き家もかなり増えてきた。それらを活用し、子育て世帯を呼び込むことで、地域全体が活性化すれば、ハウスの存在意義はまた一段アップすると考えられる。目下、郊外住宅地が抱える課題にどう対峙するか。今後も、PH金沢文庫の取り組みに注目していきたい。

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〇ペアレンティングホーム金沢文庫

京急本線金沢文庫駅から徒歩18分

入居に際するご相談等のお問い合わせ先は、以下のサイトよりご確認ください。

3mamas の情報ページ⇒ http://3mamas.com/author/3mamas/

金沢文庫facebook ページ⇒ https://www.facebook.com/parentinghome.kanazawabunko/

PHによる金沢文庫の紹介⇒ http://parentinghome.net/house/kanazawabunko/

ひつじ不動産サイトでも紹介されています!https://www.hituji.jp/comret/info/kanagawa/yokohama/parentinghome-kanazawa-bunko

 

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