「ケア相互補完型集住」シェアカルテ10 イメージは明るい駆け込み寺?シングルマザー×アクティブシニアのためのシェアハウス。福岡県久留米市コミュニティボックスの取り組み

〇シングルマザー×アクティブシニア?

独居高齢者が直面する生活課題のアレコレ。シングルマザーが抱えるケアニーズのアレコレ。それをマッチングして互いの足りないケアを相互に補完し、化学反応を起こそう。とても理想的ではあるが、その実現はなかなか難しい。

何と言っても、課題は高齢者への対応。元気なうちはいいが、「要介護となった場合どうするのか?」や「高齢者にとってそこが終の棲家になってしまい、その責任が重い」などがその理由だ。そんなハードルをもろともせず、その仕掛けをするするとカタチにしてしまったのが、福岡県久留米市にある多世代型シェアハウス・コミュニティボックスである。

久留米高校駅から徒歩10分。同ハウスの企画、運営を手掛けるのは、(有)ピアネットの平山綾子代表。平山代表は、かつて、高齢者生活支援住宅を運営していたこともある介護のプロだ。

 

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 コミュニティボックスの緑豊かな庭 ここでBBQをすることも

 

 介護保険制度が導入されて間もなかった2002年当時。様々な理由から行き場を失った高齢者の受け皿の必要性に駆られて始めた事業だった。建物は、自邸の隣にある自己所有の飲食店をそのまま転用。8畳の和室に仕切りのふすま。自宅にいるような安心感が好評で、徐々にケアマネジャーからの依頼も増えた。しかし、そこを閉鎖してまでなぜ、多世代型のシェアハウスに拘ったのだろうか。

「常日頃から高齢者ばかりを集めるとい う支援の在り方には疑問を抱いていました。入居してこられる方はみな、身体機能が低下した大変な方ばかり。本来であれば、アクティブシニアの段階で、ご自身で残りの人生プランを描けるのが理想。そういった力を養っていただけるような場所を作るのが次の私の仕事だと思ったんです」とその経緯を力強く語ってくれた。

シングルマザーをターゲットにした理由は代表自身がシングルマザーだったから。ホームの運営のため忙しく動き回る平山代表を支えたのは、他でもない、代表のお母さまやご親戚、そして支援住宅に入居する高齢者たちだった。入居者たちは平山代表のお子さんたちに何かと世話を焼いた。そして子どもたちもまた、そんな入居者たちを本当の家族のように慕い大きくなった。

「年寄と子どもを離してはいけない。彼らを引き離すことは、過去と未来を断つことと同じだ」これは、平山代表が大好きなインディアンの言葉。

女性も子どもも、そして高齢者も。単体としては弱くても、集まって双方のニーズを補い合えば、その力はより強固なものになる。そんな思いから2014年、ハウスの開設に踏み切ったのである。

 

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 筆者が実際に食べた朝食と夕食 バーのようなカウンターにて

 

〇 コミュニティボックスとは

 ハウスの開設にあたっては、国交省の居住安定化推進事業の補助金を獲得することができた。高齢者住宅を運営していた実績とシングルマザーと高齢者をマッチさせるという画期的なコンセプトが大きく評価されたのだ。

 建物は、それまで利用していた高齢者生活支援住宅を全面改築。玄関を入って左手に広々としたLDK、更にその奥に風呂と洗面所を設置。玄関ホールの右側に6畳の個室を3部屋並べ、その奥に、6畳4室、便所2カ所を新たに設けた。2階をシングルマザー専用フロア―とし、ミニキッチン付きの10畳の個室を2部屋と便所1カ所を設置した。

 

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コミュニティボックスの全体像 1階左が代表宅、右がハウス(出所:事業者より提供)

 

 

 更に、ハウスに隣接する代表宅の20畳のLDKを改装。入居者や地域住民が気軽に利用できるスペースとして開放している。

 シングルマザーの家賃は一律36000円。高齢者の場合には、入居する部屋のタイプによって36000円から39000円まで幅を持たせている。そこに共益費16000円が加算される。このほか、希望者には、朝晩の食事を38000(単身の場合は35000円)で、1カ月12時間分の生活支援を15000円で提供する。シングルマザーの生活支援については、保育所の送迎や母親不在時の保育などを想定しているという。

現在は、未就学児を育てるシングルマザーが1世帯入居している。残念ながら、これまで、シングルマザーと高齢者が同時に入居したことはないのだとか。

 

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 母子世帯向けの居室の様子

 

 「特に、ご高齢の方がこういった新しい住まい方を志向され入居を決断されるというのはなかなか難しい。もちろん、アクティブシニア層の中には、ハウスに興味があるという方はたくさんおられるのですが、連れ合いがなくなったら考えますとか。いざ、連れ合いが亡くなったら、今度は子どもさんとの関係などが生じる。まずは、いろんなところに周知して、ハウスのよさを知ってもらうことからはじめないと」といったハードルがあるのだ。とはいえ、かつて、ある高齢の女性は、期待を抱いて入居したサービス付き高齢者向け住宅での生活に違和感を持ち、情報をかき集めてコミュニティボックスへの入居を決めている。そこにいた1年足らず、彼女は、趣味の教室を開いたり、料理をふるまったり、時には地域の子どもを預かったりと、とても活動的に過ごされていたのだとか。結果的に、友人と共同生活を始めるという理由で退去はしたが、その女性の生き生きとした生活ぶりに「このコンセプトは間違っていなかった」と再確認した平山代表。

 

 

 誰に依存することもなく、やりたいことを見つけ、自分の生活を自由に描く。精神的に自立した高齢者であれば、シェアハウスでの生活はとても刺激的で有意義なものになる。他方で、こういった人材をいかに発掘するか。これからの大きな課題と言えるだろう。

 

〇シングルマザーを支援する

他方、シングルマザーからは、定期的に問い合わせが入る。徒歩圏内に、保育所、幼稚園、小学校、中学校がバランスよく点在し、子育て世帯には絶好のロケーションである。また、近隣には特別支援学校があり、そこへの入学を検討するシングルマザーからの問い合わせも少なくないという。中には、久留米市に土地勘のないケースもある。新たな生活を手探りで始めるよりも、シェアハウスならば何かと安心というのが入所を希望する理由のようだ。

どんな相談も受けてしまったら放っておけない性格の平山代表。「とにかく困っているなら、体験入居してみれば?」と誘い、先日は、2組のシングルマザーがお泊り会に参加した。いつもと違う環境にはしゃぐ子どもたち。その子たちを寝かしつけると今度は大人だけの時間。何度も「私が頑張らなきゃ」と泣きながら繰り返す参加者に、かつての自分を重ねたという平山代表。

「母子世帯になると、周囲の大人は口を揃えてあんたが頑張らんとって。子どもを食べさせていかんとって。でも、その時点でこれ以上無理っていうくらいに頑張っている。だから気張りすぎないで、あなたは十分頑張っている。いつでもここに来て休憩したらいいけん。」と声をかけることにしているのだとか。

誰かがつくってくれる料理に感激するも、子どもの世話に追われて自分のことは後回しにしてしまうママさんたち。「私が見ててあげるから、温かいうちに、たくさん食べて」そういうちょっとしたやり取りに救われるという声も少なくないそう。

 

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代表宅のLDK ここを利用して様々なイベントやカフェを

 

 一人で子育てをするしんどさと孤独。誰かがちょっとずつ、しんどい部分を引き取ってくれて、大変さが緩和する。これこそが、シェアハウスで暮らす醍醐味なのかもしれない。

 インタビュー中、これまでの経緯を語りながら何度も目を潤ませる平山代表。とっても涙もろくて優しいのだ。それでいて間違ったことが大嫌いな骨太の性格とお見受けしました。

「ハウスのイメージは明るい駆け込み寺。全国から寄せられるご相談の内容は、DV、子どもの障がい、親との確執、離婚話のこじれなど、本当に様々。課題を一人で抱え込まず、住まいに困ったら気軽に相談してほしい。ここを利用して、心も体もリセットし、大きく羽ばたいてもらえれば」と平山代表。

シングルマザー×高齢者のマッチング。ありそうでなかった画期的な企画。是非、その事業モデルを確立してほしい。

 

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問い合わせ

(有)ピアネット (代表 平山綾子)

住所:〒830-0051 福岡県久留米市南2丁目14-47

携帯:09094744770(平山)

HP: http://community-box.com/ 

Facebookページ https://www.facebook.com/minami1447communitybox?fref=ts

 

 

 

 

 

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