「ケア相互補完型集住」シェアカルテ12 育児と職、そして住まいが一体化したコンセプト型シングルマザー向けハウス「MOM-HOUSE」

〇なぜ、シングルマザーのためのシェアハウスなのか

 既存ストック活用型のシェアハウスが大多数を占める中、今回ご紹介する千葉県流山市にある「MOM-HOUSE」は、シングルマザーのために新築された数少ない事例と言える。特に注目すべきは、シングルマザーの自活に欠かせない、保育と就労がハードに組み込まれている点にある。

 ハウスは南流山駅から徒歩6分、最寄りのバス停の目の前という恵まれた立地。つくばエクスプレスを利用すれば、秋葉原まで20分と都内への通勤も十分に可能だ。周辺には、スーパーやコンビニ、ファミレス等の飲食店、更には大型の家電量販店などもある。

なぜ、この立地で、しかも新築までして、シングルマザー向けのシェアハウスなのか。

きっかけは、角地にある自己所有の駐車場を、単に、賃貸マンションやアパートに転用するのではなく、他の方法で有効活用できないかと考えたことだったと、MOM-HOUSEオーナーの加藤久明さんはことの経緯を振り返る。

写真1 MOM-HOUSEの外観 ハウスの裏には緑豊かな公園もある (写真 一部 http://www.hippo-house.com/list/mom-house より転載)

 

「私共は、ここ南流山にて賃貸住宅経営をしてきました。数年前に祖父から経営を引き継いだ際、何か地域の付加価値となるコンセプト型の建物がつくれないかと考えるようになりました。人口が減り、空き家はどんどん増える。家賃を下げれば空室は埋まります。しかし、そのやり方では限界がある。これからは、社会のニーズをいち早く察知し、それに適切に対応できるコンセプト型の住まいが求められているのではないか」とその真意を語ってくれた。

課題は、真っ白なキャンバスに何をつくるのか。誰のためにつくるのか。

 ここ数年、シングルマザーの切迫した生活実態がメディアなどでも頻回に報道されるようになり、日本の子どもの貧困率の高さも、広く周知されるようになった。加藤オーナーもまた、テレビなどで、その過酷な実態を目にするたびに胸を痛めていたのだという。

「ピンときたのは、シングルマザー向けシェアハウス。ちょうどその頃、脱法ハウス問題なんかがあって。実は、その思いを何度も封印しました。でも、やっぱり気になる。ならば、やってみるか」と本格的な計画が始まったのである。

 

〇育児と就労をコンバインする

「1階テナントには、シングルマザーの生活や自活に役立つ業種に入ってもらいたかった」と加藤オーナー。仕事と育児の両立に悩むシングルマザーの実情を知り、病児保育も手掛ける保育所運営事業者に相談を持ち掛けたところ、とんとん拍子に話が進み、契約が決まった。問題は、残る20坪ほどのテナントに何をつくるのか。

小規模保育園.JPG

写真2 ハウス一階にある小規模保育園 オハナゆめキッズハウス(筆者撮影)

「ちょうど、ビジネス雑誌を読んでいて。興味をそそられたものがあり、すぐに、話を聞きに行きました」と・・・・その先は、WASH & FOLD( https://wash-fold.com/ )という洗濯代行事業者。洗濯代行とは、日常、家庭から出る洗濯物を有料で引き受けるというサービスである。大小ある専用ランドリーバッグに詰め放題の洗濯物を即日仕上げで1,500円~2,200円(デリバリーで2,200円~3,000円)。一般のクリーニング業とは異なり、専用の洗濯機で洗い、乾燥させて畳むという業務は研修をすれば誰でもできるという点が魅力だった。

当初は、テナントとして入ってもらえればという考えだったが、結果的には、オーナー自らがフランチャイズに加盟して運営することに。

       写真3 MOM-HOUSEに併設された洗濯代行店 WASH & FOLD(筆者撮影)

 

「仕事に就いていても薄給で苦しいシングルマザーの現状を知りました。ダブルワーク、トリプルワークをこなす人もいると。ここで、正社員として働いてもらう道もあるでしょうが、むしろ、本業のお仕事に従事する傍ら、出勤前、帰宅後、休日など少しの時間に副業として働いてもらえれば、家賃分ぐらいは浮くのではないかと期待しています。何より、通勤時間0分ですから!」とのこと。少しでも生活費を増やしたいシングルマザーにとってはなによりありがたい環境と言える。

 もちろん、入居したからと言って、必ず、ここで働く必要はない。社員寮のように、職住が一体となっている場合、仕事を辞めてしまえば、住まいまで失うリスクがある。しかし、ここでは、あくまでも個人のスケジュールに併せて就労できるという点が大きなポイントなのである。

〇豊かな個室空間

2階、3階には、おおよそ20㎡の専用居室が18戸。2階の玄関を入ると右突き当りに共有の大きなLDKが。左へ進むと広い廊下を挟んで両側に居室9室が並ぶ。3階部分も全く同じレイアウトとなっている。

フロアプラン.png

図1 MOM-HOUSEの平面プラン(http://www.hippo-house.com/list/mom-houseより転載)

 驚くべきは、一般的なシェアハウスとは異なり、各居室にキッチン、風呂、トイレが完備されている点だ。かつて設計の仕事に携わっていたという加藤オーナー。子育て世帯にとって、どんな居室が望ましいのか。試行錯誤を繰り返したのだという。

「水回りを共有にすればもちろん建築コストは安くすみます。しかし、何もかも共有にしてしまうと、永く住むには厳しいだろうと。また、ハードがシェアハウス以外に応用が利かなくなるという点も危惧しました」という経緯から、現在の空間計画に行き着いた。

写真4 居室内のキッチン、バス、トイレ(http://www.hippo-house.com/list/mom-houseより転載)

 更に、目を引いたのは各部屋に配置されているクローゼット。これ、実は可動式。底のレバーを回せば、パーティションのように手軽に部屋を分割できてしまうのだ。いくら親子といえども、長期にわたり1室で暮らすというのはストレスがたまる。「子どもの成長に併せて、世帯ごとに部屋作りを楽しんでくれたら」と加藤オーナー。

写真5 クローゼットの配置によっていろいろなレイアウトが楽しめる個室 (http://www.hippo-house.com/list/mom-houseより転載)

 このほか、各居室に上下分割できる二段ベッドを配置。新規入居者には布団一式も支給する。

 この条件で、家賃は49,000円~52,000円、ここに水道光熱費としての共益費15,000円(子2人目は3,000円プラス)が加算される。入居時には、保証金として家賃1月分と入居費30,000円(子2人目は15,000円プラス)が必要だが、保証人は不要だ。

新築物件とあって、家賃を上げたいのはやまやまだが、シングルマザーの懐事情を考えるとそれも難しい。シングルマザーへの聞き取り調査を経て、上記の額に行き着いたのだとか。

 各階にある、LDKは、居住者が自由に利用できるコモンスペース。宿題をしたり、クリスマスなどのイベントをしたり、おしゃべりをしてくつろいだり。どんな風に利用されるのか。筆者も今から楽しみである。

                 写真6 2階の共有LDK(写真 筆者撮影)   

 

〇 自立支援型のシェアハウスとして

入居の対象は、母親と小学生までの子ども2名まで。201610月の入居開始以来、多数の問い合わせがあった。ほとんどが、市外・県外からの相談だ。

「シェアハウスでワイワイ楽しく生活したい」そういったポジティブなニーズよりも、「ここしか行くところがない」そんな切迫した状況で問い合わせをしてきているのではないかと加藤オーナーは推測する。

 夫から退去を求められる、緊急的に家を飛び出した、仮住まいをしている先にこれ以上いられない。筆者の調査でも、様々な理由から行き場がなく、露頭に迷うシングルマザーは少なくなかった。これらは、本来であれば、行政が対応すべき案件であるが、住まいに窮する母子への住宅支援は手薄なのが現状だ。

「ここでなら、前を向いて生活を立て直すことができるかもしれない。そう思える場所となってくれたら」とオーナーの眼差しは熱い。

 

入居希望者の面談は、オーナー自ら時間をかけてじっくり行う。重要なのは今後の見通し。特に、面談時に無職の場合には、これまでどんな仕事に就いたことがあるのか、今後、どのようにして自立を目指していくのかが問われる。

「厳しい入居基準はありませんが、やはり、将来的なビジョンをしっかり持っている方を優先させていただいています」とのこと。但し、ポータルサイト等に書かれている情報だけを見て、入居基準に合わないとあきらめず、積極的に相談してほしいと加藤オーナー。

現在、3世帯が入居している。入居当時、無職だったお母さんも、ようやく職が決まり、みんなで大喜びしたのだとか。また、別の入居者は、加藤オーナーの知人の計らいで、うまく就職につながった。

「永く南流山にいますから。知人も多いです。何かできることはないかって声をかけてくれるサポーターも増えました。このかかわりを大切に繋いで、広げることで、更に、面白い仕組みができるんじゃないかと期待しています」と意気込みを語ってくれた。

国内でほかに類を見ない、育児と就労がコンバインされた住まい。今後、その取り組みがどのように発展していくか、筆者も継続してモニタリングしていきたいと考えている。

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〇 お問い合わせ

MOM-HOUSE マムハウス (代表 加藤久明)

Address: 270-0163 千葉県流山市南流山4−13−8

JR武蔵野線、つくばエクスプレス「南流山」駅徒歩6分

 お問い合わせメールは WASHFOLD南流山店 m-nagareyama@wash-fold.com まで。

物件詳細は、株式会社ジーピーエム http://www.hippo-house.com/list/mom-house

※ ひつじ不動産のサイトにも掲載されています! https://www.hituji.jp/comret-family

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