「ケア相互補完型集住」シェアカルテ15   ケアと地域コミュニティがコンバインされた住まい―MANAHOUSE上用賀

〇充実したケアを付帯するハウスのコンセプト

今回紹介するのは、20176月にオープンしたばかりの世田谷区上用賀にあるシングルマザー向けシェアハウス「MANAHOUSE上用賀」。

定員は5世帯。管理人2名が常駐し、平日の夕食や21時までの任意の子どもの見守りサービスが付帯されるとあって、オープンからわずか2カ月足らずで、4世帯が入居を決めている。

最寄り駅、東急田園都市線用賀駅から歩くこと15分。閑静な住宅街にMANAHOUSEは位置する。ハウスは、庭付きのシンプルな一軒家。

 玄関を入ってすぐ左手に10畳の和室。ここは、1時間1,000円のレンタルスペースとして地域に開放する予定だ。玄関ホールを進めば居住者が集う広々としたLDKにつながる。その「コモンスペース」は常に外に開かれており、縁側つたいに地域の人がもぎたての野菜を差し入れに来る姿をみかけることもしばしば。

マナハウス上用賀外観

写真1 MANAHOUSAE上用賀の外観(出典:事業者より提供)

2階は、完全なプライベート空間。5つの居室(7.8帖×1室、7.5帖2室、10帖2室)とダイニングキッチン、このほか、便所2カ所、風呂1カ所、また、シャワーブース1カ所が新たに増設されている。1階にも風呂とトイレが一カ所ずつあり、朝夕の慌ただしい時間も込み合わないような配慮がなされている。

同ハウスの最大の特徴はやはり、子どもの見守り=ケアが充実している点であろう。別途料金(1万円)を支払えば、保育所のお迎えサービスが受けられる。更に、そこから21時までの間、夕食の世話などを管理人に任せることができるのだ。21時までの任意の見守りサービスは共益費の45,000円(※子ども2名以降は1名につき6,000円が加算)に含まれる。よって、月あたりの総額は、家賃と併せて107,000円から152,000円。かなり高額な気もするが、入居者からは「水光熱費はもちろん、平日の夕食代も含まれている。緊急時に慌ててベビーシッターと調整する手間が省けるほか、その都度シッター料金を積み重ねるよりもむしろ安くすむ」との意見が挙がっていた。更に、シングルマザーの実情を考えて、敷金礼金なし、仲介手数料なし、入居金3万円(返金なし)のみを徴収、保証人は不要とのことだ。

〇「シングルズキッズたちを最高にHAPPYにする」ためのハウス

筆者は、過去2回、ハウスを訪れ、うち1回は体験宿泊をしている。

夏の日の夕方、ハウスに入ると、12歳のエリカ(仮名)が私を迎えてくれた。その横でニコニコと笑うアクティブシニアの関野紅子さん。紅子さんは、現役ベビーシッターかつ同ハウス管理人という立場だ。過去、十数年、渋谷区において無認可の託児所を運営していた経験をもつ、保育士のプロ。

そこに、「ただいま~」と賑やかに保育所から子どもたちが帰ってきた。子どもたちは口々に今日の出来事を話しはじめている。リビングの卓上には、紅子さんが準備したおいしそうな食事と食器類が並べられている。

「先に手を洗って~」とそこに飛び込んできたのは、シングルズキッズ株式会社代表、MANA HOUSE上用賀の管理人でもある山中真奈代表だ。山中代表は、長らく、不動産業界に身を置いていた経験から、同ハウスの企画に乗り出したという。

「まず、うちの事業の最大の目的は“シングルズキッズ(ひとり親の子どもたち)を最高にHAPPYにする”ことなんです。ママの幸せや笑顔こそが子どもたちを幸せにする。そのために、私たちはシングルマザーをサポートするんです。」と強調する山中代表。

同社では、シェアハウスの開設に先駆けて、かつてひとり親家庭で育った34名に対して、アンケート調査を実施している。その結果、「辛かったこと・悲しかったこと」の項目で多く挙がっていたのが、「いつも一人で過ごしていたこと」や「母が忙しく何かあっても相談ができなかったこと」などである。

仕事に、家事に育児にと孤軍奮闘するシングルマザー。肉体的にも時間的にもギリギリのスケジュールで働き続ける彼女らにとって、余裕をもって子どもたちと過ごす時間は残念ながら、ほとんど残されてはいない。事実、そのため、ひとり親家庭の子どもたちは、孤食が常態化したり、夜遅くまでたった一人で親の帰りを待ったりというケースも少なくないのだ。

マナハウス上用賀写真2

写真2 筆者が宿泊した日の夕食と食後の風景 出典;筆者撮影

「不動産というお仕事が大好き、そして子どもも大好き。シングルズキッズだちの実情を知って、ますます、この社会課題を解決するために、自分の得意分野で何ができるのかを考え始めました。そう考えてたどり着いたのが、MANAHOUSEのコンセプトだったんです」と語ってくれた。

ハウスの開設に向けて、綿密な企画をもとに、物件と人材を確保、更に、改築費用を工面するクラウドファンディングも実践した。多くの賛同を得て、晴れて、マナハウスが開設したのが、2017年の6月。オープニングパーティにはたくさんの有志が集まった。

ホームページ立ち上げと同時に、全国から多くの問い合わせがあった。プレシングルマザーや就労の幅を広げるため心機一転、上京を視野に入れるシングルマザーからの問い合わせが目立ったという。その中から、ご縁のあった4世帯、管理人含め総勢12名がともに暮らしている。

 

〇コミュニティ重視、孤独の解消もハウスのメリット

ハウスのもう一つの特徴が、「地域を巻き込む」という点だろう。子どもが不在の平日10時から、1階LDK部分をサロンカフェとして地域会員に開放する。会員条件は、65歳以上のシニアであること、あるいはハウスの理念に賛同することのいずれかを満たすこと。月3,000円を支払えば、時間内はいつでも出入り可能で、ワンコインで昼食や夕食をとることもできる。

マナハウス上用賀理念図

図1 MANAHOUSAE上用賀のコンセプト(図は事業者より提供)

「色んな大人がいて、色んな考えがある。大人もそれぞれ得意分野が異なる。幅広い知識を子どもたちが吸収する。宿題を教えてもらうということでもいい。将棋やトランプ、おもちゃの手作り教室に、戦争体験を聞く場でもいい。とにかく、色んな価値観が世の中には存在するんだってことを知ってもらう、交流できる場を提供したいと思いました。これは、シニアにとってもいい刺激になるだろうと確信しています。」という熱い思いが詰まった場が、MANAHOUSEなのだ。

夕食の時間、子どもたちは食べる準備にとりかかる。この日の献立はキーマカレーとサラダ。お味噌汁をこぼさないように運ぶのは5歳のダイキ(仮名)。「いただきます」と大きな声がハウス内に響く。その後、ぼちぼちとママたちが帰宅。「おなかすいたよ~!」とすぐにテーブルにつき、自然と1日の報告会が始まる。「今日は保育園どうだった?」、「ママくたくただよ~」。など、みんなが口々にはなしはじめる。と、その間も、あちらこちらで子どもたちの喧嘩が勃発。泣いた子をあやすのは必ずしもその子の親ではなく、非血縁のかかわりが円滑に出来上がっている。

「結婚していてもワンオペ育児だった。仕事から帰ってばたばたとご飯を作って。子どもたちが騒ぐのを叱りながら汚れた部屋に自己嫌悪になって。それでも、子どもをお風呂に入れて。孤独だったな。今は何より、帰ったら美味しいご飯が用意されている。そして、みんながおかえりと言ってくれる」とハウスを評価するのは居住者のヨウコ(仮名)さん。「みんなここのコミュニティに救われてるんだよ」と横からアイコ(仮名)さんが言葉を重ねる。

子どもたちが寝静まった深夜。「なんで離婚になっちゃったんだろうね。これでよかったんだよね」と涙したのは、入居者第1号のリエコ(仮名)さん。彼女を抱きしめて励ますのはまた別の入居者だ。ケアの合理化と孤独の解消。彼女らの日常を観察しながら、シェアハウスはそんな可能性を秘めていると強く感じた。

 

MANAHOUSEはそろそろ満室状態になる。「2棟目の計画は?」との筆者の質問に、

「本来は、規模の大きな戸建てに独居するシニアのお宅に、シングルペアレントをマッチングさせることが狙いです。但し、いきなりのマッチングはリスクも高いので、まずは、自社で下宿モデルを作り、私(代表自身)が住み込み体験をして、システムを構築する。今、この段階なんです。次のフェーズとして、近隣の余っている住戸を開拓する予定です。まずは、子どもたちのハッピーのために何が必要か。ここ(MANAHOUSE)で仮説と検証を繰り返してオペレーションを完成させることが必要ですね。」とのこと。

 シングルペアレントの住生活問題、そして、独居高齢者の問題を一気に解決しようという同事業に大きな期待が寄せられる。

何より、こういった事例が全国に広がれば、多くの、シングルマザーが救われる可能性が出てくる。充実したケアと密なコミュニティの創設。非常に難しいコンセプトを具現化したMANAHOUSEのカタチ。今後、継続してモニタリングしていく予定です。

 

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MANAHOUSEへの入居について

・簡単な入居審査、面談がございます。

・敷金礼金なし、仲介手数料なし、入居金3万円(返金なし)

・別途保険料

・保証人不要、緊急連絡先必須

・お子様1名追加+共益費6,000 /

・ご入居時お子様の年齢0歳~小学生低学年まで(ご入居された後は何歳でもお住まいいただけます)

・保育園等お迎え別途10,000 /

・厳しいルール、門限はありませんが共同生活、一階が地域開放型ということご理解いただける方

・保育園、小学校の入園・入学についてはお客様自身でお問合せください。

・室内の家具はありません。

・土日は入居者様で夕食はご用意いただきます。

<物件について>

住 所:東京都世田谷区上用賀5丁目

交 通:東急田園都市線 用賀駅 徒歩15分

<学区>

小学校:用賀小学校

中学校:用賀中学校

<契約>

形 態:定期借家契約1年 ※再契約可能

 

詳しくは、single’s kids のホームページをご参照ください 

⇒ http://manahousekamiyoga.singleskids.jp/

 

 

 

 

 

 

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