「ケア相互補完型集住」シェアカルテ16 多様な課題を抱えるシングルマザーを包み込む住まい―大阪市はぐぅ~むまな

〇木密空き家をシングルマザー向けシェアハウスに転用

今回ご紹介するのは、20173月にオープンしたばかりの大阪市生野区にある「シングルマザー×シングル女性」を対象にしたシェアハウス「はぐぅ~むまな」。

はぐぅ~むは、「包み込む・抱きしめる」、まなはハワイの言葉で「魂」を指す。文字通り、そのコンセプトは、様々な課題を抱え傷ついた女性たちの魂を丸ごと包み込む場所と言えるだろう。

当初、同ハウスは、木造密集市街地(木密)の改善企画の一環として発案された。

企画は、建築、不動産を専門とする(株)コージツハウス、運営を担うのは、NPO法人ライフデザインだ。

「生野区と木密に関する勉強会を重ねる中で、木密空き家とシングルマザーの住生活という2つの課題解消ができないかと。敷地選定と空間プランを練る中でこれを具体化しました。」とコージツハウス代表の北圭司さんは話してくれた。

また「シングルマザー支援」という具体的な案を提示したのは、北代表の奥様の宜英さん。「自分の子育てを終えて、地域の課題のために何かできないかって。そんな時、色んなところで、シングルマザーの課題を聞いて。これやって思ったんです。」と目を輝かせながら語ってくれた。

 空き家となった5軒連棟の長屋を建替えるプラン。ハウスから最寄り駅へは徒歩5分。大阪の中心部、梅田や難波、天王寺へのアクセスも抜群だ。まずは、所有者にことの経緯を説明。地域性に見合った事業であることや社会的意義の大きさを訴えなんとか「シングルマザー向けシェアハウス」の企画について了解を得ることができた。

 ハウスは木造の2階建て。ワンフロアに居室が5室(すべて7畳)。風呂とキッチンは2カ所ずつ。また、便所は朝のラッシュを考慮して3カ所設置した。更に、玄関を入ってすぐ20畳ほどのリビングダイニング。玄関も広々としており、小さな子どものためにベビーカー置き場も設置した。1階、2階とも全く同じ間取りとなっているが、外階段でつながっているため、上下階の生活が混じることはない。

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図1 はぐぅ~むまなの見取り図(事業者より提供)

 

〇 生活をまるごと受け入れる

家賃は1階が42,000円。2階が43,000円。共益費管理費は20,000円。この共益費には、当初、月に4回の夕食会費が含まれていたが、経済的にも時間的にも余裕のない入居者が多いため、現時点では夕食会を開催せず、共益費を10,000円(シングル女性は9,000円)としている。更に、生活支援の目的で、入居後1カ月は家賃無料(共益費は必要)としている。

写真左 共有の食事室、 右上 共有の居間、右下 共有のキッチン

 生活保護受給者の入居も可能であり、入居相談時に生活課題がある場合には、社会福祉協議会などの連携をとり積極的に支援を行っている。シングルマザーに対しては、有償での保育所への送り迎えや預かりサービス、行政や地元企業との連携による就労支援メニューも準備している。

開設当時、シングルマザー限定としていたが、シングル女性からの相談も多かったため、1階をシングルマザー専用、2階をシングル女性専用と方針を変えた。2017年現在、シングル女性4名(20代~60代まで多様)、シングルマザー1世帯が居住している。

多世代のゆるやかなコミュニケーションも出来上がりつつある。料理好きのシングル女性が母子に御裾分けをもって1階に訪れる姿も。当初は、様々課題を抱え、緊張しきりだった母子も、居住者に心を開きつつある。その仲を取り持つのが、目下、宜英さんの役割だ。

どの世帯も経済的にも時間的にも余裕がなく、食事に割くエネルギーが消耗していた。それを心配していた宜英さん。「皆で材料費を少しずつ負担して料理教室をしない?」と提案。今では、それが定例化し、その日を心待ちにする居住者もいるのだとか。

「人の生活をお預かりしているので、本当に、日々、色々あります。そのたびにハウスに足を運んで課題解決。大変ですが、面白いですよ。」と語る宜英さん。「先日は、高熱を出した子どもを連れて、病院に駆け込んだのよ」と屈託なく笑う。

その横で、苦笑いする圭司さん。「彼女、思い込んだら命がけですわ」と一言。

写真左 共有の風呂、写真右上 7畳の個室、右中 共有の手洗い、右下 玄関ホール

 

〇ハウスにより求められる支援が異なる

当初は、働くシングルマザーの負担を軽減しようと、食事会や育児支援などを積極的に行うことを想定していたはぐぅ~むまな。しかし居住者と接するうち、「高額な共益費を取ってサービスを付帯するより、うちのスタイルは料理なんかを一緒にすることで、生活スキルを身に着けてもらう方がいいのかな。コミュニケーションも取りやすいし」と宜英さん。

日々の生活に追われるシングルマザー。ご飯の作り方や、栄養価など、なかなか配慮する余裕がないケースも多い。夕食の支度の際、「ちょっとしたひと手間で素晴らしい夕食になるよ」と積極的に伝え、実際に料理を伝授するなどを心がけている。いつも、具材のない焼きそばを食べていた方が、そこに、野菜を入れ、ウインナーをいれた写真を送ってくれたことが嬉しかったと宣英さん。「朝食も手間をかける必要はなんかないよ、お味噌汁に野菜をたくさんいれてみて!」とアドバイスをしたら、こどもの便秘が解消したと喜んでくれたことも。

どんな階層が入るかでサービスニーズは大きく変わる。ここをうまくくみ取って流れに乗っている感じがリアルで面白い事例である。

「課題は?」との筆者の言葉に。「山積みです。今は本当に手探りでやっているところ。人間関係の課題は正直多いですよ。それを一つ一つ解きほぐしていっている段階。何かあると、それは、それぞれの個性として捉えようよと声をかけている。ルールやマニュアルは大事だけど、それでは補えないとても細かい部分への対応が大きいと思っている。そのためには、第三者である私がきっちりとコーディネートしていくことが今は必要かなと思っています」とのこと。2棟目、3棟目の企画もないわけではない。

ただし、「ハードは準備できても、ソフトの面が追い付かないです。やっぱり、シェアハウスはソフト面が重要やと痛感しています。その担い手がいれば、いくらでも、ハードは提供しますが、今のところ、妻だけでは、回らないので」と圭司さん。

 その意見に「絶対、私のような意思を持っている方はいるはず。私もいろいろ出かけて行って、色んなネットワークを作って、人材を発掘しなければと思っています。」と宜英さんが言葉を重ねる。

筆者のフィールドでもある大阪ど真ん中。とてもエネルギッシュなお二人。企業型かつ生活課題解決型のハウスは全国的に見ても事例がほとんどない非常に貴重なモデルである。

今後も引き続きモニタリングさせていただく予定である。

 

〇 問い合わせ ご相談は⇒06-6713-2610(10:00~18:00 日・祝定休日)

 

NPO法人ライフデザイン

〒546-0002 大阪市東住吉区杭全2-11-8

TEL:06-6713-2610

E-mail: info@npo-lifedesign.org

 

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