「ケア相互補完型集住」シェアカルテ17 多様な世帯が織りなす地域コミュニティに溶け込む。団地活用型シングルマザー向けシェアハウス Chocola 市ヶ谷加賀町maman

〇ショコラママンができるまで

 今回は、筆者も企画者の1人として参画した、新宿加賀町にあるシングルマザー向けシェアハウスを紹介する。これは、住まいに関する研究助成等で実績のある(一財)住総研が所有する敷地面積4782.4㎡、階段室型870戸のアパートの1室(602㎡)を2世帯定員のシングルマザー専用シェアハウスに転用した事例である。20173月に開設、現在、1名がそこで生活している。

ショコラママン外観団地

写真1 新宿加賀町団地敷地内の様子

出典:https://www.hituji.jp/comret/info/tokyo/shinjuku/chocola-maman/images?size=s

場所は牛込柳町駅から徒歩5分、新宿へも自転車で十数分。少し歩けば、JR市ヶ谷の駅も利用できる。このような大都会の只中にあって、それを感じさせない敷地の広さと緑豊かな環境が大きな魅力だ。

 

(一財)住総研では、既に、棟内8戸(24室)を単身の男女向けシェアハウスとして活用しており、団地内のコミュニティづくりについても豊富な実績を有している。その一環として持ち上がったのが本企画だった。 

 「就労に有利な立地条件を活かし、集住による助け合いというメリットを併せて、シングルマザーの自立が後押しできないかと考えました。団地周辺は豊かな住宅街で、敷地内も死角が少なく、オートロック式でセキュリティ面も充実しています。また、顔なじみの管理人が常駐するなど子育てには安心の環境です。」と語るのは企画担当の岡崎愛子さん。

 募集に先駆けて、2016年の8月から企画会議がスタートしている。まずは、生活の場となる階段室型1階の3LKをどのような空間につくり替えるのか。3世帯向けにするには窮屈すぎる。とは言え、2世帯向けというのはあまりにも関係が密になりすぎはしないか。様々議論を重ね、3LKを2LDKに改修して2世帯向けとする方針に落ち着いた。個室は7畳が2室。バストイレ、キッチン、リビング、ダイニングは共有だ。

 更に、1世帯1室という縛りから「有期の住まい」とならざるを得ない現状を打破できないかという議論に発展する。そこで、ゆくゆくはリビングダイニングスペースを仕切って子ども部屋にできるように工夫した。子どもが小さなうちは母子同室とし、成長すれば、2段ベッドなどを置いて、子どもだけの空間となる。もちろん、将来的にそこを利用する子ども達の年齢や性別のマッチングは慎重に行われる。なお、各世帯同伴児童は1名までとし、男児は小学校4年生まで、女児は中学校3年生までとしている。

間取jpeg

図1 chocola 市ヶ谷加賀町maman の見取り図

出典:事業者提供資料より筆者作成

 

〇入居者像とサービス

 (一財)住総研は、住生活向上に資するための総合研究を推進する財団であり、よって、同事業は、営利目的というより、むしろ、社会貢献色が強いものである。従って、住まいに困窮し、これから職を探して生活を立て直そうという対象を救済するという方向性も残されていた。但し、福祉ニーズの高い層を引き受けるにはそれなりのケアが必要となる。計画段階ではその人材もスキルも担保することができなかったため、自活して働くシングルマザーをターゲットとすることとなった。

  家賃は7万円。シェアハウスとは言え、これは、周辺の家賃相場からすれば、かなり良心的な額だ。事実、入居面談の際には「都内で7万円くらいの物件は日当たりも悪く古くて汚い。オートロックもなくセキュリティ面が不安」といった声は多く聞かれた。同団地は、築年数は古いが、メンテナンスも十分に行き届いており、植栽は豊かで、耐震性も保障されている。更に、低層かつ隣棟との距離も十分にあるため、日当たりは抜群だ。

 続いて、付帯するケアをどうするかが議題にあがる。シングルマザー向けシェアハウスの中には、夕刻のチャイルドケアや夕食を提供しているところもある。これを手本に、ショコラママンでも、その方向性も議論したが、定員2世帯という小規模ハウスにそのためのマンパワーを導入して採算をどう合わせるかという点に躓いた。

 結果、月に上限15000円(共益費分)を育児支援金として支給する方法を採用した。この資金は、育児ケアに関わる費用であれば、月々の保育料、緊急時のシッター料金、ファミリーサポート、病児保育等、どんなものにも利用することができる。求められるケアは働き方によっても、子どもの年齢によっても大きく変化する。よって、必要な時に必要なケアを自由にカスタマイズできるという方法が、生活上の課題解決をスムーズにするのではないかと期待している。

写真2(左上)キッチン横のダイニングスペース、緑のカーペット部分がリビング、ゆくゆくはキッズスペースに。写真3(右上)オシャレなキッチン。勝手口からベランダに出られる。写真4(右中段)7畳の個室。クローゼットあり。写真5(右下)日当たりのよいベランダ。写真6(左下)オートロックでセキュリティ面も安心。

出典:https://www.hituji.jp/comret/info/tokyo/shinjuku/chocola-maman/images?size=s

〇 地域に溶け込むための「シカケ」

 シェアハウス入居者には、団地内イベントや団地居住者との交流を積極的に図ることが求められており、むしろ、それが入居の要件となっている。これには、居住者同士の関係のみならず、それを団地内に広げ、団地内全体のコミュニティを向上させる狙いもある。

 敷地内には、多様な階層、多様な世帯が混住している。その多様性を武器に、埋もれた人的資源を有効活用しつつ、団地全体の互助を醸成する「シカケ」をどう作るか。住総研では、これまで、防災訓練や夏休みイベントなど、住民を巻き込む手法を模索してきた。その一環として、将来的にはショコラママンのリビングスペースにおいて定期的な食事会を予定している。地域の子育て世帯への参加も呼びかけ、小学校中学年以上であれば、子一人での参加も可能とする。

 育児支援が必要な世帯はシングルマザーに限ったことではない。どの世帯も多様な子育てニーズを有している。ハウス内の助け合いを前提に、それでは足りない部分は地域へと広げることが期待される。

 201731日の募集開始から、多数の入居相談が寄せられた。主に、入居のタイミングや保育所の待機問題、子どもの年齢や性別の不一致など、マッチングの面で折り合いがつかず、現在、1名の入居となっている。小規模だからこそ時間をかけてマッチングを進め、丁寧に入居者を迎える。このスタンスやプロセスは社会貢献性の高い住まいだからこその強みとも言える。

キッズから

写真7 天井のカーテンレールで仕切りを作って子ども部屋になるように工夫。近い将来、このスペースで食事会が開かれる。

出典:https://www.hituji.jp/comret/info/tokyo/shinjuku/chocola-maman/images?size=s

 「住総研ではお子さんの成長とともに、出てくる空間や生活上の課題をともに解決して、できる限り長く住んでもらいたいと思っています。そのためにできる限りのサポートはさせていただくつもりです。」と岡崎さん。

 ご興味のある方は、是非、下記URLからお問い合わせを。なお、ハウスの写真は、ひつじ不動産オシャレオモシロフドウサンメディアのファミリー向けサイトより転載いたしました。

https://www.hituji.jp/comret/info/tokyo/shinjuku/chocola-maman

 

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