「ケア相互補完型集住」シェアカルテ18     公営住宅をシングルマザー向けシェアハウスに 群馬県営住宅の新たなチャレンジ

 自治体への調査行脚を続けても、出てくるメニューは、公営住宅の優先入居制度、住宅転宅資金の貸し付け、更には、母子生活支援施設への入所のみ。

目新しいものが全く出てこず、いずれも使いにくいというのが、筆者の印象であったが、ここにきて、独自の知恵やメニューで、福祉ニーズに対応しようという住宅施策がいくつか登場している。

そこで、今回は、群馬県営住宅をシングルマザー向けシェアハウスに転用したユニークな事例を紹介したい。

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公営住宅×シングルマザー向けシェアハウスという発想

20196月、群馬県前橋市に、県営住宅を活用したシングルマザー向けシェアハウスが開設した。

 同企画は、2017年頃から始動。そもそもは、県庁部署の領域横断による施策提案コンペが発端だったという。

社会ニーズにマッチした、それでいて、コミュニティの活性につながるような仕組みとは何か。

タッグを組んだのは、母子家庭支援の担当部署である、群馬県子ども未来部子育て・青少年課と公営住宅を管理する県土整備部住宅政策課である。

 当時、既に、民間企業によって開設されていた、シングルマザー向けシェアハウスを公が運営するというかなりチャレンジングな発案は、福祉部門と住宅部門が協働したからこそ、実現した貴重なものと言える。

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写真1 群馬県営住宅母子シェアハウスの外観(群馬県提供パンフレットより)

 

まず、老朽団地の建て替えを機に平面プランを提案。対象となったのは、築40年ほどの階段室型のRC5階建て。エレベータ―設置に伴い、共有廊下を設備して、片廊下型へ改修した。

 ポイントは、3階全体をシェアハウスとして活用するため、通常コンクリートの廊下となる部分に壁を設置し、セキュリティー付きの玄関を増設した。玄関入口に下駄箱を設置、フロア全体を上足利用とした。廊下はクッション材を利用、手すりも設置されている。

群馬外観 (2)

図1 シェアハウスフロアの見取り図(群馬県より提供)

 

 

写真2~4 左下;シェアハウスフロアの入り口、左上;シェアハウスの玄関、右;廊下

 

玄関を入ってすぐ右手にある2LDKの居室をシングルマザーのコモンスペースとして開放する(図面黄色着色部分)。 

水回りが完備された独立住戸に加えて、フロアに共有の居場所があるというつくりは、本ブログシェアカルテ12のMOM-HOUSEを参考にしたのだという。

共有空間は、面積43㎡、多人数で使えるキッチンを設置している。県側は、開設からしばらくは、地元NPOに共有空間のコーディネートを任せるという。そこでは、季節ごとのイベントや、各種相談、関係づくりの食事会などの開催を想定している。

群馬キッチン

 

写真5 共有空間のキッチン(写真2~5筆者撮影)

 

居室も全面改修され、日当たりもよく、良質な空間となっている。

 また、興味深いのは、棟内1解の2室を改修し、地域のコモンスペースとして開く点である。立派な厨房も設置、子ども食堂の開設を予定しているのだという。このほか、無料学習支援を運営するNPOほか、多様な活動をする団体を募り、シフトを組んでイベントを定期開催する。

  入居者の選定は、一般の公営住宅基準相当、つまり、公営住宅法施行令で定める、収入基準が、15万8千円(小学校未就学世帯等は21万4千円まで)以下であること。加えて、第1子が12歳までであることとなっている。2019年6月以降、定期募集で入居者を募っており、7月に2次募集が行われた。今後、空き住戸がある場合には、随時募集へと移行する。なお、県外からの応募も可能である。

居室が1室しかないことと、手のかかる幼い子がいる家庭の支援を目的としていることから、子の年齢制限(第1子12歳の3月まで)を設けている。子どもが中学校へ入学する段階でどこへいくのか?という疑問に対しては、団地内には空室もあるため、そこへの転居支援を視野に入れているとのことであった。

  家賃は、1LDKで月額16,600円から、2LDKで月額20,100円から。いずれも共有リビングの賃料を含んでいるが、共有スペースの消耗品、水光熱費は入居者側の負担となる。このほか、駐車場は1台3,000円とのこと。

ここに、就労支援が加われば、群馬県へ移住という流れもできるかもしれない。

  老朽化した公営住宅は、どこも高齢化が進み、また、階層が固定してしまうことで、地域の活力も失われつつある。今ある資源をいかに、社会のニーズにマッチさせて、作り替えていくか。特に、公的住宅は、それへの対応が全く追い付いていない。その中で、こういったチャレンジングな取り組みが出てきたことに、筆者は大きな希望を抱いている。

 今後も、企業型シェアハウスの取り組みと併せて、行政によるグッドプラクティスを順次取り上げていきたいと考えている。次回は、神戸市のひとり親向け家賃補助制度の仕組みについて、また、関東圏にある市の公営住宅目的外使用の取り組みについて紹介する予定である。

 

【同団地にご興味のある方は】

〇団地所在地 群馬県前橋市広瀬町

〇お問い合わせ、申し込み→群馬県住宅供給公社、027-223-5811まで

 

 

 

 

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